ねぶろぐ~詩と競馬とたまにウツ~

土~月は競馬予想、レース回顧をUPします。その他の日は俺の日常、日々の想いを綴った詩をUPしていきます。詩、競馬、ちょっとウツな方の閲覧をお待ちしています。

『グラスワンダー』

第27回『グラスワンダー』

 この頃、メガネをかけていても文字が見えにくい。現在、掛けているメガネは何せ8年も前に買ったもの。そろそろメガネを新調しよう。数日前からそんなことを考えていた。

 そんな折に一軒のメガネ店を見かけた。名前は『グラスワンダー』。「グラス」は分かる。でも、「ワンダー」ってなんだよ?どんな不思議なメガネがあるか気になったので暇つぶしがてらで入店した。

店員:いらっしゃいませ。

ねぶ:こんにちは。

 メガネ屋の店員だから当然、メガネをかけていた。「デキるOL」という雰囲気の店員さん。「デキる」と言ってももちろん「ナニがデキる」わけでもない。

店員:気になる商品があったらお声をお掛けください。

ねぶ:はい。

 陳列棚に目を遣ると、確かに不思議な……というか、うさんくさいメガネのオンパレードだった。まともなメガネは見当たらない。

ねぶ:店員さん?

店員:はい。いかがしましたか?

ねぶ:普通のメガネはないの?量販店で売っているようなものは。

店員:何分、個人経営の店なので、普通のメガネは大手の値段に敵いません。そういうわけでウチではヨソで扱っていないメガネを中心に取り揃えております。

ねぶ:なるほど。でも、これらは本当に効果あるの?

 俺は「透視メガネ」を手にとって尋ねた。

店員:もちろんですとも。掛けていただければすぐに分かることですよ。

ねぶ:どれどれ。

 そういうと俺は「透視メガネ」を掛けて、店員へと視線を送った。ピンク色の視線を。

店員:あ、お客さん、そのメガネをかけてこちらを見ないで……。恥ずかしい!

ねぶ:げ!

店員:イヤン、お客さん、こっちを見ないで。

 店員は顔を赤らめながら、胸と股間を腕で隠すようにしていたが、そんなしぐさは無意味だった。なぜなら名前に偽りなく、このメガネは衣服や下着を透視してみることができた。さらには皮膚や細胞も透視し、店員の骨格が手に取るように見ることができた。

ねぶ:皮膚も透視してしまうんだから、別に恥ずかしがる意味もないのでは?

店員:恥ずかしいに決まっているじゃないですか!身体の奥の奥まで見透かされるなんて、もうオヨメに行けない……。

ねぶ:そんなバカな(笑) だいたいこのメガネ、需要あるんですか?

 骨格を見られて「嫁に行けない」と言われても困ってしまう。メガネを外して尋ねてみると

店員:当店の売れ行きナンバーワン商品ですよ。主に医療関係の方がお買い求めになられます。

ねぶ:レントゲン代わり?

店員:そうです。

ねぶ:値段が書いてないんだけど、これはおいくらなの?

 値札には「Priceless」と記されていた。

店員:お買い求めになられる方の必要度に応じて相談させて頂いております。ご入用でしょうか?

ねぶ:うーん、保留で。

 透視力が強すぎてヨコシマな目的には不向きのようだ。

ねぶ:これはどういうメガネなんですか?

 俺が手に取ったメガネ。商品名は『ラブグラス』と記載されている。フレームはピンク色でいい歳の男が掛けていては気恥ずかしい代物ではある。

店員:お掛けになってみられてはいかがでしょうか?

ねぶ:恥ずかしいものではないの?

店員:視線を送る相手にもよるかと思います。

ねぶ:ほう。

 俺はそういうとピンクの『ラブグラス』を掛けてみた。

店員:どうでしょう?

ねぶ:えーっと、店員さんの姿がサーモグラフィーのように見えます。青や緑色の部分が多いですね。これは相手の体温を見るものですか?

店員:いいえ、これは相手の好意を視覚で見ることができる優れものなのです!

ねぶ:ということは青や緑色が多いのは……。

店員:お客さまが私の好みではないということです。

ねぶ:きっぱり言わないでくださいよ。傷つくなあ。

店員:あ、失礼いたしました。恋愛感情がないだけで、お客様に吐き気をもよおすような嫌悪感を抱いているということでは決してありません。

ねぶ:そんな説明されると余計に傷つくんですが。ちなみにコレはおいくら?

店員:29800円になります。お買い得ですよ。次回入荷時期も未定ですから。

 貧乏学生の俺にとって29800円は安い買い物ではない。

ねぶ:うーん、どうしようかなあ。

店員:わかりました。それではフェロモン入り香水もお付けします。

ねぶ:でもなあ……。

店員:お客さまには敵いません。それではさらに赤マムシドリンクをおまけします。

ねぶ:どちらもメガネ店と関係ないのでは?

店員:うちはチェーン店ではございませんので。

 そういう問題なのだろうか?しかし、俺は店員の押しに負けてしまった。

ねぶ:分かりました。じゃあ買います。

店員:ありがとうございます。アフターサービスもばっちりですので、何かありましたらいつでもいらしてください。

 買ったはいいものの使いどころが難しい。常用するにも恥ずかしい。ネタにはなるかな。そんなことを考えながら、俺は『ラブグラス』を納めた袋を提げて店を出た。
スポンサーサイト

テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

連作短編『ねぶとS君の平凡なキャンパスライフ』 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<12年小倉2歳S展望 | HOME | ナニも言えなくて……夏>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |